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第1回 「ピンクリボン知っていますか?」femalelife club掲載記事

femalelife clubに井上院長が寄稿した記事を許可を得て、転載いたします。

【femalelife club】http://www.femalelife.jp/club/backnumber/108.html

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あなたは乳がんについてどの位知っていますか?
たとえば先進国で乳がん死が増えているのは日本だけとか。
今、井上先生の熱意あふれるメッセージをしっかり読むことが、
自分のおっぱいをまもることにつながります。
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第1回
「ピンクリボン知っていますか?」

はじめまして。私は東京都下、立川市で分娩も扱う産婦人科有床診療所の院長をしている井上裕子です。

お産、不妊治療、婦人科検診を3つの柱に地域のかかりつけ医としての、女性の健康サポートに関わっています。

*ピンクリボン知っていますか?

この数年、ピンクリボンをよく見かけますね。

ピンクリボンは乳がんの早期発見・早期治療を啓発するシンボルのリボンです。

増加し続ける乳がん、欧米諸国に比べ少ないと言われていた乳がんですが、日本でも増加傾向、1990年以降、女性のかかるがんのトップになりました。

アメリカ7人に1人、日本では15人に1人という割合です。日本でも新規患者数は6万人を超えると想定されています。

最近、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが両側乳房切除、再建術を行ったニュースに衝撃を感じた方も多いと思います。

この予防的な手術によってアンジーさんの乳がんになるリスク87%が5%以下まで減少したと報じられています。

遺伝性乳がんという言葉に驚きを感じた方も多いと思います。

医学の進歩によっていくつかのがんの発症に遺伝子が関わっていることが解ってきました。

乳がんにはBRCA1 BRCA2という遺伝子の変異がその発症に関わっていることが報告されています。

お隣の韓国では遺伝子検査に保険適応があるため検査率は9割だそうです。

遺伝性乳がんはアメリカより実は日本のほうがやや多いといわれています。

勿論すべての乳がんが遺伝するタイプのものではありませんが。

この報道がきっかけに、乳がんについてもっと知って欲しいと切に思います。

検診で早期発見すれば、多くが完治するがんの代表が乳がんですから。

*検診の方法
乳がんは自分でも検診が可能ながんですが、視触診だけでは乳がん死は減少できないと実証されています。

触診で触るのは乳腺のサイズは硬さにもよりますが、2センチ位です。

がんが3センチを超えると命にかかわると言われています。

触診では早期発見は難しいのです。

画像診断にはマンモグラフィーとエコー、MRIの検査があります。

MRIは効果的ですが、コストの面や、まだまだ症例が少なく検診への導入はまだ検討中です。

欧米では遺伝性乳がんのリスクのある人にはマンモグラフィー併用のMRI検診を推奨しています。

乳がんの早期発見に 貢献するだろうと導入されたマンモグラフィーですが、2012年11月米国予防医学専門委員会から「40歳代のマンモグラフィーは推奨しない」との見解が出されました。

乳腺の濃度は個人差も多く、最近は中高年になっても濃度が濃く、マンモグラフィーでは発見し難いがんも多いの現状です。

エコーは侵襲が少なく良い検査ですが、検査機器や検査者によって差が出てしまうため、今後の導入を施策検討中の方法です。

この4つの検査は1つの方法ではなく、年齢や乳腺のタイプ、遺伝の背景によって組み合わせが大切です。

私の所では、すべての患者さんに自己チエックの視触診を月に1回。20歳代にはエコー検診。

30歳以上の方にはエコー併用のマンモグラフィー検診を勧めています。

妊娠中はエコー検診。ピルやホルモン補充療法、不妊症治療中の方にも検診の必要性、乳がんの頻度、治療、検診の事など、「知る事」を啓発しています。

*検診してますか?
これまでに産婦人科外来では「1度も乳がん検診を受けた事のない」という方に多く出会いました。

理由は、乳がんと言われると怖い(検診を受けないのはもっと怖い…)マンモグラフィーって痛いらしい(今は技師さんはとても上手、機械も進歩、時間は4枚で20秒ほど、想像するほど痛くなかったと皆さん言います…)X線被ばくが怖い(乳がんになると、放射線治療という選択もあります。

マンモグラフィー1回4枚で、アメリカ行き飛行機の片道切符程度の被ばく量、健康被害はありません)、検診費用が高い(乳がん治療費はもっともっとかかります)どこに行けばいいか判らない(ショッピングのように、インターネットで検索可能です)などを挙げられます。

私のクリニックで必ず乳がん検診に毎年受診される方の理由は、身内に乳がん患者さんがいる、会社の同僚にいる、知人が乳がん、乳腺の良性疾患(乳腺症、乳腺繊維腺腫など)があるので心配といった理由です。

がん基本法案では、がんの早期発見、早期治療、がん死を減少させるには、検診率を50%以上にすることが目標とされていますが、現状ではとても及びません。

東京のように最高レベルの検診施設が多数あり、がん治療の有名病院が多数あり、情報が溢れていても、東京の乳がん検診率は47都道府県のうち45番目、死亡率は第1位です。

10月はピンクリボン月間として、東京タワーや都庁などがピンクにイルミネーションされたり、多くの芸能人を 集めてのピンクリボンイベントは華やかですが、一向に乳がん検診率は上がらないままです。先進国で乳がん死が増加しているのは日本だけです。

*検診の賢い受け方
検診には2つの方法があります。対策型検診と任意型の検診です。

前者は国や自治体、組合などが、対象者の死亡率を下げる事を目的として行っている公共的な医療サービスです。

公的資金を使い、なるべく多くの対象集団に効果な方法で、乳がん検診の場合は多くの自治体が2年ごとに視触診・マンモグラフイーを行っています。

後者の任意型検診は、個人の死亡率を下げる目的で全額自己負担で、検診場所や方法を選択する方法です。

自分の相性のいい、かかりつけ医における毎年繰り返し検診が理想ですが、なかなか実現は難しい状況です。

検診はコストフリーと思っている方も多いですね。

乳がん検診は約10年前からマンモグラフイーが導入されましたが、乳がん死は減少していないのが現状です。

40歳以上の方は地域の対策型検診は必ず申し込んで2年毎のマンモグラフィー検診と、ご自分で必ずエコーによる乳腺チエックも受けて下さい。

40歳以下の方、決して40歳まで待たないで、ご自分でマンモグラフィーとエコー検診の両方を受けて下さい。

コストが高く感じるかもしれませんが、乳がんになって、進行した乳がんになれば治療費は莫大です。

再建術に使用するシリコンは7月からやっと保険適応になりましたが、30万円もかかります。

約30回分の検診費用です。20歳台の方、特に家族に乳がんの方がいる方は20歳でも検診を勧めます。

*サバイバー
乳がんサバイバーになっても赤ちゃんを産む方もいます。

もちろん治療後、外科医師のオーケーが出てからですが。

がんサバイバーになっても自分らしく生きている、多くの先輩もいます。

日常生活に不便や辛い事もある事は想像の範囲ですが、ピンクリボンとは、早期治療の為の検診の啓発だけが目的ではなく、乳がんサバイバーや家族への思いやり、優しさの啓発でもあります。

*自分のおっぱいは自分で守ろう。
ネイルアートにかかる金額や、ちょっとした月1000円の節約を、検診費用にストックしましょう。

ピンクリボン活動は何より自分の為、愛する人の為のリボンです。

今夜、お風呂でそーっと自分のおっぱいの自己チエックからでも始めましょう。

Posted on 2014/07/25

井上レディースクリニック

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